不動産特定共同事業法の許可・登録のための財務要件まとめ

不動産特定共同事業法に基づく不動産投資型クラウドファンディング

近年、不動産特定共同事業法が改正されオンライン完結型の不動産小口投資の商品組成が出来るようになったのに伴って不動産投資型クラウドファンディング事業者の参入が相次ぎました。特に2020年は多くの事業者が不動産クラウドファンディング事業に参入しました。特に2020年から募集が行われた事業者ですと、株式会社グローベルスの運営する大家.comや穴吹興産株式会社の運営するJointo αなど、サービスリリース以降、精力的に案件の募集が行われています。

Jointoα(ジョイントアルファ)
大家.com

そんな注目度の高い不動産投資型クラウドファンディングサービスですが、サービスを始めるのに許認可の取得が必要となる不動産特定共同事業法には財務要件や人的要件などの形式要件が多く、自社でも許可を取得出来るかどうかの判断が難しいというご相談をよく頂きます。今回は不動産投資型クラウドファンディングを開始するにあたって特に主流となる第1号事業の許可を取得するケースを特に想定し、どのような要件を充足すれば不動産特定共同事業法に基づく不動産投資型クラウドファンディングのサービスを行うことが出来るのかを行政書士として解説していきたいと思います。

不動産特定共同事業法の財務要件

不動産特定共同事業法は、1994年に制定され、1995年4月1日から施行されたました。 その当時の不動産特定共同事業法の制定の背景として、まず一つにバブル景気後の景気停滞期であり、不動産価格はバブル景気の時に非常に高騰した影響もありますが、大きく下がっていました。また、同時に不動産特定共同事業法の施行の当時は、財務的にも脆弱な不動産会社も積極的に不動産小口投資商品を投資家に販売し、不動産価格の下落による投資家の出資元本の毀損や、販売元となっていた不動産会社が倒産して投資家が出資の目的である不動産からの収益を受けられなくなるなど、投資家に大きな損害を与える事例がいくつも出てしまい問題にもなっていました。 そのような背景から、不動産特定共同事業法では、不動産事業を営む事業者が不動産小口投資商品を組成・販売する行為を規制することが大きな目的としてあり、事業者への財務的要件が厳し目に定められています。

資本金の要件

事業者の純資産に関する要件の一つとして資本金の要件があります。国土交通省の公開している不動産特定共同事業(FTK)法の概要に記載の通り、不動産特定共同事業法では各事業者の手掛ける事業形態に応じて、必要とされる最低資本金額が定められています。

国土交通省資料より(https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001311695.pdf)

必要となる資本金の額は以下の通りとなっています。  

不動産特定共同事業法許可・登録の資本金要件(New Frontier行政書士事務所作成)

必要な資本金の金額としては一般的な第1号事業者で1億円となっており、高めの金額で設定されています。背景としては第1号の不動産特定共同事業においては、投資家の出資の対象である不動産の所有権が第1号事業者にあり、事業者が倒産してしまった場合、投資家の出資の対象物件が差し押さえられるといった事態が生じる恐れがあり、財務の健全性を国土交通省・都道府県庁が審査するにあたって十分な資本金あることが求められています。

純資産の要件

次に純資産の部の要件として、「純資産が資本金又は出資の額の100分の90に相当する額に満たない状態となっていないこと」が求められています。

こちらはわかりにくいですが、純資産(=総資産-総負債)が資本金の金額の90%以上の金額となっている必要があるということです。この規定の理由としては、資本金の額が大きくても、会社の過去の繰越欠損金の金額が大きく、実態として財務状況が非常に悪化しているような会社は許可・登録を得られないようにするという趣旨です。

例として第1号事業者としての許可を取得したい事業者で資本金が1億円の場合、純資産の額が9,000万円以上であることが求められます。

不動産特定共同事業法許可・登録の純資産要件(New Frontier行政書士事務所作成)

 

過去3期分の決算書・納税証明書・監査報告書の取得

不動産特定共同事業法の許可の取得(第1号~第4号の許可取得)に際しては、過去3期分の決算書を、該当期間毎の監査報告書を添付して提出する必要があります。過去3期分の監査を公認会計士から受ける必要が出てくるため、従来より会計監査を受けていない事業者については、決算に関する各種書類は必ず適切に保管し、早めに監査対応の目処をつけることで、監査報告書の取得で躓くことのないようにしましょう。また、納税証明書も提出する必要があるため、3期目の決算を待って本申請をする事業者については監査証明書を併せて納税証明書をいつごろ取得できるのかよく確認しましょう。なお、不動産特定共同事業法の登録(小規模第1号不動産特定共同事業及び小規模第1号不動産特定共同事業)については、過去2期分の決算書類及び納税証明書の提出で十分であり、監査報告書を公認会計士より得ることは必須ではありません。

損益及び事業計画の要件

特に電子取引業務を用いて不動産投資型クラウドファンディングを行う事業者の審査の際に重要なのが、直近決算や進行期の決算が赤字でないことです。国土交通省が公表している不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドライン(https://www.mlit.go.jp/common/001283702.pdf) に直近の財務状況が赤字でないことが、不動産小口投資案件の募集審査の際の審査ポイントとして挙げられており、「直近の財務諸表において赤字の場合には電子取引業務を行わないことが望ましい」とされています。特殊要因があって赤字になっている場合等、合理的な説明が出来る場合は例外的に問題ないとされることもありますが、原則的に直近の決算実績や当期(計画)の決算が赤字ではないことがガイドライン上必要だと言及されているので注意が必要です。当論点については、電子取引業務のガイドラインを全文読み込んで解説している記事も公開しておりますので、詳細を調べたい場合はこちらの記事をご参照下さい。

『不動産特定共同事業法の電子取引業務ガイドライン』を解説-不動産クラウドファンディングの手引書③-

上記のように、不動産特定共同事業法は元来財務状況に関する要件が本来の制定の趣旨から厳しめであり、また、電子取引業務は不特定多数の投資家から小口で出資を募ることを主として想定されているため、直近の損益状況や計画についても赤字にならないことも求められているため、純資産及び損益状況の見通しについてきちんと管理し、3期分の監査報告の取得も可能かどうかも含めて慎重に検討していきましょう。

 

New Frontier Funding編集部
編集部
多くの投資型クラウドファンディングサービスの立ち上げのための許認可の取得から事業運営までを手掛けてきたNew Frontier Capital株式会社・New Frontier行政書士事務所の編集部にて作成しております。

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